小川かえい 選
縄文の月を灼く火焔 楽遊原
夏空に白線引かれていく 薄井 啓司
どこでもドアの隙間気づかれぬようみつめた 南家歌也子
鳳仙花弾いて俳人になる 平山 礼子
忘れ上手になれなんて絞り切れないレモン 高木 架京
田んぼのひび割れに逃げ込む夕立 草場 克彦
賞味期限を優先順位に食べかける 弓削 酔魚
流した記憶が丸くなり岸辺に戻った 奥野立日十
雷に意見の違う人と雨宿り 伊藤 人美
夏の果てぼろっきれにように転がって眠る 秋生 ゆき
停止線で吸い上げられ宇宙の横丁に出た 黒崎 溪水
落葉踏む音がすでに諦めている きむらけんじ
日陰のワルツは歌えない 福田 和宏
親指ひとつトンとして行く 大山 まる
小さな秘密が生まれたような帰り道 小山 貴子

私は人々にかういふ。
君等が心の土に真実の種をおろせ。
君等が生活の上に生命の木を生ひ立たせよ。
大地の力を生きることの力とせよ。
太陽の光を生きることの光とせよ。
然らば、君等が生命の木はやがて多くの花をつけ多くの実を結ぶであらう。
(井泉水著『生命の木』「芸術より芸術以上へ」)